ベトナム人社員や取引先から結婚式の招待状を受け取ったとき、「ご祝儀はいくら包めばいいのか」「どんな服装で行けばいいのか」と戸惑う日本人管理職は少なくありません。日本の結婚式の常識をそのまま持ち込むと、思わぬ失礼にあたるケースもあります。とはいえ、事前にポイントを押さえておけば、ベトナムの結婚式は異文化交流を深める絶好の機会となるでしょう。そこで、ベトナムの結婚式の流れやご祝儀の相場とマナー、服装の正解、当日の振る舞い方まで徹底的に解説します。

ベトナムの結婚式①:日本とはここが違う

ベトナムの結婚式は、日本の結婚式とは規模も意味合いも大きく異なります。まずはその全体像を理解しておくことが、当日の戸惑いを減らす第一歩となるでしょう。

参列者は200人から500人が当たり前

日本の結婚式では招待客が50人から100人程度というのが一般的です。一方、ベトナムの結婚式では参列者が200人から500人にのぼることも珍しくありません。これは、ベトナムでは結婚式が新郎新婦だけのイベントではなく、両家の親族や地域社会全体の祝い事として位置づけられているためです。そのため、職場の同僚が一斉に招待されるケースも多く、「自分だけ特別に呼ばれたのだろうか」と気負う必要はないでしょう。

結婚式の前に「婚約式」がある

ベトナムでは、結婚式の前に「Lễ ăn hỏi」(レー・アンホイ、婚約式)と呼ばれる儀式が行われます。これは新郎側の家族が新婦の家を訪れ、結納品を贈る伝統的な行事です。日本の「結納」に似た儀式ですが、ベトナムではこの婚約式こそが両家の正式な結びつきを意味すると考えられています。結婚式当日だけでなく、この婚約式に招かれることもあるため、その違いを知っておくと安心です。

祖先崇拝が結婚式の中心にある

ベトナムの結婚式で日本人がもっとも驚くのは、祖先崇拝が式の中心に据えられている点でしょう。ベトナムでは、結婚式の朝に新郎新婦が自宅の祭壇(Bàn Thờ、バントー)の前で祖先に結婚の報告と祈りを捧げます。家族の絆を何よりも重んじるベトナムの文化的価値観を反映した儀式であり、祖先に認められてこそ結婚が成立するという考え方は、現代のベトナムでも広く受け継がれているものと言えるでしょう。

ベトナムの結婚式②:ご祝儀の正解──白封筒は絶対に避ける

ご祝儀は結婚式のもっとも大切なマナーのひとつです。しかしながら、日本の感覚で準備すると思わぬ失敗を招くことがあります。封筒の色、金額の相場、縁起の良い数字など、押さえるべきポイントを確認しておきましょう。

封筒の色は赤かピンク一択

日本の結婚式では白い祝儀袋が一般的ですが、ベトナムでは白は「葬儀」を連想させる色とされています。そのため、白い封筒でご祝儀を渡すと、相手に不快感を与えてしまう可能性も否定できません。ベトナムの結婚式では、赤やピンクなどの華やかな色の封筒を使うのがマナーです。赤はベトナムにおいて幸運や繁栄を象徴する色であり、お祝い事には欠かせないものと考えていいでしょう。現地のコンビニエンスストアや文房具店で「phong bì mừng cưới」(フォンビームンクオイ、結婚祝い用封筒)として販売されています。なお、ベトナムの色の文化については「ベトナム人の好きな色は?男女別に解説」や「ベトナムで縁起のいい数字は9!ラッキーカラーも紹介」の記事でも詳しく紹介しています。

相場は3,000円から6,000円、上司ならやや多めが好印象

ベトナムの結婚式のご祝儀は、日本と比べるとかなり低い金額が一般的です。友人や同僚であれば50万ドン前後(日本円で3,000円から5,000円程度)が相場と言われています。一方、上司や目上の立場から贈る場合は、5,000円から6,000円程度を包むとより丁寧な印象を与えることができるでしょう。もちろん、金額は地域や新郎新婦との関係性によって変動するため、ベトナム人の同僚に事前に相談しておくことをおすすめします。

北部と南部で縁起の良い数が異なるとされている

ベトナムのご祝儀で特に注意したいのが、地域による縁起の良い数字の違いです。北部(ハノイ周辺)では奇数が縁起の良い数とされ、南部(ホーチミン周辺)では偶数が好まれるという説があります。こうした地域差がどの程度厳密なものかは諸説あるものの、招待してくれたベトナム人社員に事前に確認しておけば間違いないでしょう。

ベトナムの結婚式③:服装の正解──フォーマルスーツは浮く

日本の結婚式ではフォーマルな装いが求められますが、ベトナムの結婚式では事情が異なります。気候や文化の違いを理解して、適切な服装を選ぶことが大切です。

「きれいめカジュアル」が最適解

ベトナムの結婚式は屋外やレストランの大広間で行われることが多く、日本のようなホテルウェディングとは雰囲気がかなり異なります。そのため、ダークスーツに白ネクタイといった日本式のフォーマルスタイルで参加すると、かえって浮いてしまうことも少なくありません。男性であれば襟付きシャツにスラックス、女性であれば明るい色のワンピースやアオザイ風のドレスなど、「きれいめカジュアル」を意識するのがベトナムスタイルです。

白一色や黒一色は避けたほうが無難

服装の色選びにも注意が必要です。先ほどご祝儀の封筒でも触れましたが、ベトナムでは白は葬儀を連想させる色とされています。また、黒一色のコーディネートも同様に弔事を想起させるため避けたほうがいいでしょう。赤やピンク、黄色など明るく華やかな色を取り入れると、お祝いの場にふさわしい装いとなります。加えて、ベトナムは年間を通じて気温が高い地域も多いため、通気性の良い素材を選んでおくと快適に過ごせるでしょう。

ベトナムの結婚式④:当日の振る舞い──日本の常識を手放すと楽になる

ベトナムの結婚式の当日は、日本の披露宴とはかなり異なる雰囲気の中で進行します。「こうしなければならない」という日本的な固定観念を一度手放して、リラックスして参加するほうが楽しめるでしょう。

食事が終わったら退席しても問題ない

日本の披露宴では最後まで着席しているのがマナーとされますが、ベトナムでは食事が一通り済んだら退席しても失礼にはあたりません。むしろ、次々と入れ替わりで参列者が訪れるスタイルのため、長時間居続ける必要はないと言われています。新郎新婦やその家族に挨拶を済ませ、食事を楽しんだ後は、タイミングを見て退席しても問題ないでしょう。

乾杯と祝福の言葉を覚えておくと喜ばれる

ベトナムの結婚式で使える2つのフレーズを覚えておくと、場の雰囲気がぐっと和みます。乾杯の掛け声は「Một hai ba dô!」(モッハイバーヨー、「1、2、3、乾杯」の意味)で、テーブル全体で声を合わせて唱えるのが定番です。新郎新婦への祝福の言葉としては「Chúc mừng hạnh phúc!」(チュックムンハインフック、「幸せをお祝いします」の意味)が広く使われています。たとえ発音が完璧でなくても、ベトナム語で祝福しようとする姿勢自体が、相手にとって大きな喜びとなるでしょう。ベトナムの乾杯文化についてさらに詳しく知りたい方は「ベトナム人との飲み会で失敗しない!乾杯文化から職場の宴会マナーまで徹底解説」の記事もあわせてご覧ください。

お酒を断る際には配慮が必要

ベトナムの結婚式では、テーブルを回ってお酒を勧められることがよくあります。これは単なる飲酒の誘いではなく、「一緒に祝い合いたい」という親愛の表現と考えていいでしょう。そのため、無言で断ったり、不愛想な態度をとったりすると、関係性に影響を及ぼすこともあります。お酒が苦手な場合は、「cảm ơn」(カムオン、「ありがとう」の意味)と感謝を伝えたうえで、体調や健康上の理由を丁寧に説明するほうがいいでしょう。グラスに少しだけ口をつけるだけでも、相手への敬意を示すことができます。

まとめ

ベトナムの結婚式は、ご祝儀の封筒の色から服装、当日の振る舞いまで、日本の常識とは異なるポイントが数多くあります。しかしながら、こうした違いはベトナムの人々が大切にしてきた家族の絆や祖先への敬意、地域の結びつきに根ざしたものです。

ベトナム人社員の結婚式に招待されるということは、職場を超えた信頼関係が築かれている証と言えるでしょう。事前にマナーを調べ、現地の習慣を尊重する姿勢を見せることで、お互いの距離はさらに縮まります。文化の違いを楽しみながら、心からの祝福を届けることが、よりよい職場関係の構築につながるでしょう。